平成26年9月27日(土)、薪ユーザーによる森林整備活動に参加しました。
埼玉県環境部みどり自然課が主導して、入間市宮寺にある「さいたま緑の森博物館」の森林整備を実施。博物館といっても展示物はほとんどなく、自然博物館だ。
今回整備作業をするのは、薪ユーザーなど、木を利用したい人たちを募集して集めたメンバー。

今回は下草刈りを行った。
2年前に伐採をした場所が雑草で覆われてしまったので、下草を刈ってあげることで、木の成長を促すことができる。

午前中と、午後の少しの時間でだいぶ綺麗になった。


この活動の趣旨としては、木を利用することからスタートする里山の再生ということだ。
さいたま緑の森博物館は、雑木林や湿地、田んぼなどの武蔵野の風景が広がる場所。そのなかの雑木林を維持するために、定期的な伐採をしている。
その伐採をした木は、放置され腐るだけだったのだが、数年前から我々JWS(日本薪ストーブユーザー会)のメンバーで運び出して薪として利用させてもらっていた。
しかし、数名のメンバーで運び出せる量などたかがしれている。
今回の活動は、県が薪ユーザーに伐採した木を配布するのを条件として、森林整備活動に参加してもらおうという事を実験的に始めたもの。うまくいけば、もっと多くの木の利用ができるだろう。
さて、木を利用することから里山の再生をしたいわけだが、そもそも「里山」とは何か?
里山というのは暮らしの中で利用する薪や炭を手に入れるために、人間が木を育てて管理してきた森林を指した言葉だ。
日本では、薪や炭を利用した生活が長く続き、煮炊きや暖房を賄ってきた。しかし、エネルギー革命と称して、石油、ガスの利用に切り替わり、今ではオール電化で電気に置き換わっている。
その結果、薪炭利用は激減し、利用されない里山は伐採され、造成し住宅などに変わった。わすかに残った里山も人の手が入らない事でやはり崩壊した。
伐採しても崩壊し、伐採しなくても崩壊するとはどういう事か。
里山の木を伐採しないで放っておくと、木が成長しすぎてしまうのだ。
里山の木(クヌギやミズナラなど)は、薪や炭として利用するために毎年伐られているが、伐るのは10年~20年生のものだ。
伐ったあとにはどうするか。植林?いやいや、植林ではなくそのまま放置するのだ。
放置しても、木を伐った切り株から新しい芽が生まれ新しい木が成長して、10年~20年後には、薪や炭として利用できるだけの大きさの木になる。
伐った切り株から芽が出る事を、「萌芽更新」という。

これは、2年前に伐ったクヌギ。切り株の脇から新しく3本の木が成長している。

高いところでは5mほどに成長している。この場所は日当たりもよく、周りに木もないので成長がはやいのかもしれないが、10年もすれば十分な大きさに成長しそうだ。
ここで人の手が入る。3本のうちの成長の良い1本か2本を残して伐ってあげれば、より早く成長するだろう。畑で作物を育てる時の間引きと同じだ。
さて、ここで面白い写真をご覧いただきたい。

これは、萌芽更新したクヌギの木から10mほど離れた場所にある、同じクヌギ。
なんとこれで6~7年生との事だ。
実は、このクヌギは植林したもの。苗木として3~4年育てたものを3年前に植林したそうだが、これしか成長していない。萌芽更新したクヌギと違い、薪として利用できるのは何年後になるのだろうか見当もつかない。。。
この植林したクヌギの場合、まだまだ栄養をためる力がすくないので、下手をすると雑草の勢いに負けて枯れてしまうそうだ。だから、春・夏・秋と年に3回ほどの下草刈りが必要になるとの事。
一方の萌芽更新したクヌギは、それほど頻繁にやらなくてもあまり雑草に負けないので、手間もかからない。
薪炭利用のために里山を維持するとしたら、萌芽更新なしでは成り立たないってことだ。この萌芽更新をうまく利用することで、日本人は生活の中のエネルギーを再生してきたわけです。
巷で言われる再生可能エネルギーって、もう以前からずっとそこにあったのですよ。
さてさて、話はもどって伐採しなかったために里山が崩壊したっていう件ですが、放置された里山の木は、20年ほどで伐られるところが、誰も伐らないためどんどんと木が成長してしまった。その多くは50年生、60年生となったが、これは人間と同じ高齢化したってことです。
高齢化した木を伐っても萌芽更新がおきません。高齢化出産が難しいのと同じですね。
若いうちに木を伐ってあげないと、木の循環がとまってしまうわけです。だから、今の里山は姿はあっても、里山としての循環は崩壊してしまっているわけです。
木を伐ることは森林破壊だと安直に考える人もいるが、里山の場合、木を伐ることで里山の循環を促すことになるのですね。
とはいえ、まだ萌芽更新してくれる木も残っているので、とりあえずは古い木は伐って、新しい里山を時間をかけて再生していくことが我々の使命だと思っています。
新しい木を育てるために、古い木を伐ること。下草刈りをして木を育てること。木を利用する人が増えれば、この森林整備を一緒にやってくれる人も増えるのかなと思うので、薪ストーブユーザーが増えるのは大歓迎です。
森林整備なんかしないよ、薪は買えばいいさっていうお金持ちも歓迎です。薪が売れれば商売が成り立つので、山にかかわる人が増えるってことに繋がるし。
薪ストーブは使わなくても、里山の状況を理解してくれて、木を伐ることが森林破壊じゃないっていう事を知ってくれるだけでも嬉しいです。
良く整備された里山は美しいよ。私が暮らしている場所は里山というよりも山里で、雑木林も少なく、植林された針葉樹がほとんど。
でも、いつか美しい里山になったらいいな・・・。ちょっと楽しみにしておこうっと(^^)